作詞 添田唖蝉坊/作曲:若宮万次郎(「欣舞節」の譜)
花は散れども香を残し 人は死すとも名を惜む
堂々五尺の大丈夫が いかで瓦全を計るべき
旅順港口閉塞の 任にあたりし決死隊
忠勇義烈の勲を いざや語らん聞けよ人
我海軍は勇ましく 弥彦、米山、千代、福井
四艘の舟を沈めんと 選ぶ勇士は六十と四人
四艘の汽船に乗込みし 四組の勇士其中に
広瀬中佐は福井丸 部下を指揮して目ざしたる
地位に向いて弾丸の 飛び交う中を物とせず
首尾よく船を乗入れて 装置なしたる爆薬の
導火線に火をば点ぜしめ 轟然ひびく爆音に
なんなく任務を遂行し いざ引上げんと隊員を
ボートの中にうつしたる 折しも一人兵曹長
杉野孫七見えざるは 如何なる故ぞ如何にせし
杉野々々と叫びつつ 再び飛び乗る福井丸
大半沈めど顧みず 部下を愛する真心の
深き中佐は此処彼処 探ね廻りし甲斐もなく
更に影だに見えざれば 余儀なくボートに乗り移る
折から飛び来る敵弾に うたれて中佐は粉みじん
脳漿あたりに四散して ボートあやつる同乗の
勇士を血汐に染めなしつ 壮烈極まる名誉の戦死
ああ目覚しき其最後 五体空しく朽つるとも
残る偉功は赫々と 千代に八千代にかおるらん
悲壮じゃ 悲壮じゃ